旧大洋村(鉾田市)ミニ別荘のメリット・デメリット

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「別荘」といえば多くの庶民にとっては高嶺の花ですが、規模や構造をコンパクトにすることによって、庶民にも手が届く範囲に価格を抑えたのが「ミニ別荘」です。
全国にはこうした「ミニ別荘」とよばれる小規模な別荘が集中する地域がいくつかあるものの、首都圏であれば特に鹿島灘に面した旧大洋村、いまの鉾田市を中心としたエリアが著名です。
もしもこの地域で定住目的で「ミニ別荘」を検討するのであれば、メリット・デメリットを見据えた上で判断をするとよいでしょう。

旧大洋村(鉾田市)のミニ別荘登場の経緯

旧茨城県鹿島郡大洋村は、2005年の市町村合併により、現在では茨城県鉾田市の一部となっています。
この地域は太平洋に隣接し、砂丘や畑地、谷津田が織りなす農村地帯です。比較的平坦な土地が多いのが取り柄ではあるものの、かつては鉄道やバス、高速道路のネットワークが弱く、いわば「陸の孤島」の状態にあったといえます。
それだけに、日常生活を営むマイホームとしての戸建て住宅の需要はあまりなく、開発が進まない時代が長く続いてきました。

しかし1980年代に入ると、全国的なリゾートブームに乗って、この地域でも庶民に手が届く程度の格安価格をアピールする「ミニ別荘」の開発が盛んになりました。
これまで開発が進んでいなかったことから手つかずの土地が潤沢に残されていたこと、鹿島臨海工業地帯の開発とあいまって鹿島臨海鉄道のような交通インフラが整備されるようになったことに加えて、メロンなどの農産物が豊富で、夏場は海水浴場でにきわい、栃木・群馬などの海なし県からの観光客にはそれなりに知名度があったことが理由といえます。

旧大洋村(鉾田市)のミニ別荘のメリットとは

格安物件が豊富なのが最大の特色

旧大洋村(鉾田市)のミニ別荘のメリットとしてまず挙げられるのは、その価格水準の安さです。

Athome、Suumo、Nifty不動産などの大手不動産売買ポータルサイトで検索して見ればわかるとおり、鉾田市の戸建て別荘物件の価格帯は1棟あたり100万円台から400万円台で購入できるものが多く、数年前であれば関東地方、特に首都圏の中では珍しい、30万円や50万円といった100万円以下の激安価格のものまでがサイト上に登場していました。

現在は中古物件のストックも少なくなり、往時よりも価格帯が上昇しているようすですが、それでも100万円台か、ぎりぎり100万円以内の物件はまだ見かけますし、300万円も出せば少なくとも外見はそこそこの庭付き一戸建てが手に入る点は、他の別荘地にはない魅力です。

積雪の心配がない温暖な気候

太平洋岸にあり年間を通じて比較的温暖なため、旧大洋村での積雪はほとんどありません
そのためマイカーで往来する場合にも、スノータイヤに履き替える必要はなく、飛騨や山梨、能登などの別荘とは違って、冬場の利用はいくらでも可能です。

オールシーズンで使えることから、最近では特定の季節や週末だけの別荘利用にとどまらず、定年を迎えたサラリーマンが悠々自適の定住生活を送るためにミニ別荘を購入するケースも目立っています。

マイカーで行ける距離に都市施設が揃っている

旧大洋村エリアには、夏場の海水浴場で人気のある大竹海岸がすぐそばにあるほか、「水戸黄門」で知られる徳川御三家の城下町で県庁所在地の水戸市、サッカーJリーグの鹿島アントラーズの本拠地である鹿嶋市からはそれぞれ20キロ圏で、レクリェーション・レジャースポットには事欠きません。

スーパーマーケット、レストラン、ショッピングモール、ホームセンター、家電量販店なども近場にありますので、マイカーさえあれば定住生活で困ることはないでしょう。

また、東京都心からも100キロ圏と、距離的には意外に近いため、日常は東京で生活し、週末だけを別荘で過ごすといった使い方もできます。

ミニ別荘を購入する前にデメリットを確認する

旧大洋村(鉾田市)のミニ別荘を購入するのであれば、やはりデメリットについても知っておたいほがよいといえます。
格安価格とはいえ数百万円規模の取引ですし、不動産はいったん購入してしまうとなかなか同一条件で売却するのが難しくなるため、一方では慎重な判断も求められます。

写真で見るミニ別荘の事例

井戸
▲自家用の浅井戸。この小屋の中に電動ポンプが格納され地下水を汲み上げている。管理会社が1軒あたり年間2~7万円程度で複数の別荘に水を供給する共同井戸も多い。

石膏ボード
▲居室内。内壁は石膏ボードが剥き出しになっており、壁紙(クロス)仕上げの物件はあまり見ない。結露でカビが発生することも。

浴室
▲浴室・トイレ。壁はベニヤ板で内部はアコーディオンカーテンで仕切られているのみ。浴室の床はコンクリートたたき。昭和の遺物のバランス釜が残っている場合も少なくはない。

貧弱な建物のため定住にはリフォームが必要

旧大洋村(鉾田市)で格安販売されているミニ別荘は、バブル経済の時代に粗製乱造されたという事情もあって、住宅としてのグレードがかなり低く、もともと定住には向かないつくりとなっています。

この地域のミニ別荘のスタンダードな仕様を挙げてみると、次のようになります。

屋根はトタン葺きになっている
内壁はクロス仕上げのものは少なく、石膏ボードが剥き出しになっているものばかり
天井板を水平に張った平天井のものはほとんどない
断熱材は床下にある程度でほとんど用いられていない
コンクリートの土間に小さな浴槽が付いたバスルームがある
トイレとバスルームはアコーディオンカーテンで間仕切りしただけ
トイレは汲取式で浄化槽は設置されていない
基礎はブロック積みか木製の電柱を輪切りにしたものを使っている
傾斜地にせり出して建築されることがある

これらは価格をできるだけ安くするための工夫ともいえますが、定住利用にとっては次のように大きなデメリットとなります。

台風などですぐに屋根材が剥がれて雨漏りしやすい
石膏ボードの隙間にアリなどが繁殖して虫害に遭いやすい
結露のため石膏ボードからカビが繁殖したり、シミになったりする
断熱性に乏しいため、冬は寒く、夏は蒸し暑い
天井が高いので暖房や冷房が室内に行き渡らない
風呂の湿気が抜けず壁や柱が腐食したり、不衛生な環境になりやすい
地震や地すべりがあった際に建物が倒壊してしまいかねない

このように価格とトレードオフの関係としてクオリティが犠牲となっている点には特に注意を要します。
ミニ別荘の多くは築年数がすでに30年から40年は経過しており、一般的な木造住宅の耐用年数の20年程度を軽く上回っていますので、その意味でも価格相応の買い物といえるのかどうか、現地に行って自分の目で確かめてみることも重要です。

もしも定住を目的とするのであれば、屋根や外壁といった傷みのはげしい部分のリフォームは、最低限でも必要になるおそれがありますが、リフォームにかかる料金を考えると、最初からよりグレードの高い一般住宅を購入したほうが得かもしれません。

別荘地全体の管理が行き届いていない場合が多い

鉾田市の場合、バブル経済で潤った開発業者の多くは、すでに倒産して別荘地を管理していないケースが少なくはありません。

完全に入居者の自主管理となっている別荘地、地元の不動産業者などが共同井戸の管理だけを行っている別荘地など、いくつかのパターンがありますが、いずれにしても軽井沢や那須のような有名どころの別荘地とは異なり、除草や道路舗装などのまともな管理はほとんど行われていないと見たほうがよいでしょう。

その結果として、すでに所有者が管理を放棄してしまって廃屋となっている別荘が点在していたり、別荘地に向かうまでの道路が笹や樹木で覆われていて進入ができなくなっていたり、落ち葉が堆積して側溝が塞がり下水があふれたりしているケースが多々みられます。

仮に管理不十分で共同井戸が使えなくなった場合、新たに自前で井戸を掘る必要がありますが、その費用は20万円から50万円程度はかかります。

マイカーがないと生活できない

旧大洋村(鉾田市)の別荘地は、農地としても利用価値のない、幹線道路から奥まった場所にある傾斜地を強引に開発したものが少なからずあります。

公共交通機関としては路線バスの関鉄グリーンバス、鉾田市の運営するデマンドタクシーがありますが、幹線道路沿いの停留所から別荘地まではかなり歩きますので、結局は自家用車がなければ買い物や病院には行けないのが実情です。

ミニ別荘地に定住している世代も高齢者が多く、隣近所の助け合いで自家用車を出してもらうといったことも期待できません。

コンビニエンスストアやスーパーマーケットも同様に、市街地や幹線道路沿いにはありますが、もともと市街地や幹線道路からは離れた場所にあるミニ別荘地の周辺にはない場合がほとんどです。

メリット・デメリットの再確認を

このように旧大洋村(鉾田市)のミニ別荘は価格の安さなどのメリットが大きい反面、建物のクオリティの低さなどのデメリットもあります。購入する場合はメリット・デメリットの両方を再確認の上で、慎重に判断することが重要です。